なぜ、DXは「部門ごと」に売られるのか|部門最適の先に起きること
この記事の結論
- 7月22日から24日まで、幕張メッセで「DX総合EXPO/AI World 2026 夏 東京」が開催されている
- 傘下には人事・労務DX、経理・財務DX、法務DX、マーケティングDX、営業DX、業務改革DXなど、部門別の専門展が並ぶ
- DXが部門ごとに切り分けられて売られるのは、導入判断のしやすさという合理的な理由がある
- 一方で、部門ごとに最適化を進めた結果、システム間の連携が新たな課題として浮上している
- 本当に問われているのは、ツールをつなぐことではなく、部門をまたぐ判断を誰が持つのか、である
部門ごとに、DXが並んでいます
本日7月22日から24日まで、幕張メッセで「DX総合EXPO 2026 夏 東京」「ビジネスイノベーション Japan 2026 夏 東京」「AI World 2026 夏 東京」が同時開催されています。入場は無料(要来場登録)です。 (出典:エバーリッジ株式会社 プレスリリース)
構成を見て、少し考えさせられました。
DX総合EXPOの傘下には、人事・労務DX EXPO、経理・財務DX EXPO、法務DX EXPO、マーケティングDX EXPO、営業DX EXPO、業務改革DX EXPOといった専門展が並びます。さらに小売・飲食店、製造業、建設・建築、不動産、物流といった業種特化の専門展も加わります。 (出典:エバーリッジ株式会社 プレスリリース、イベントマーケティング)
つまり今、DXは部門ごとに切り分けられて売られているわけです。
なぜ、部門ごとになったのでしょうか
これは、悪いことではありません。むしろ、合理的な流れです。
「DXをやりましょう」と会社全体に言っても、誰も動けません。範囲が広すぎて、何から手をつけるのか決められないからです。ですが「経理の紙をなくしましょう」なら、担当者の顔が浮かび、効果も測れて、決裁も通ります。
売る側から見ても同じです。部門を絞れば、課題が具体的になり、提案がしやすくなる。買う側も売る側も、部門で切ったほうが話が早い。だから、こうなりました。
弊社も営業支援という一つの部門に向けたサービスを提供している以上、この流れの中にいます。
部門最適の先に、何が起きているのでしょうか
ただ、その先で起きることも見えてきています。
部門ごとに最適化されたツールが、部門の数だけ増えていくという現象です。
営業部はSFAを導入する。マーケティング部はMAを入れる。経理は経費精算のクラウドを入れる。人事は勤怠管理を刷新する。それぞれの部門は、たしかに便利になります。
けれど会社全体で見ると、システムがばらばらに増えていく。そして次の課題が生まれます。「これ、つながっていませんよね」と。
実際に、こんな引き合いが届きました
先日、弊社にも営業支援システムに関するご相談が届きました。詳細は伏せますが、要件の中に、こんな一文がありました。
既存で使っている複数のシステムとの連携を希望する。
挙げられていたのは、販売管理、ワークフロー、経費精算、会計、グループウェア。5つです。 それぞれ別のシステムで、それぞれ別の部門が使っている。API連携が望ましいが、難しければCSVでの連携でも構わない、と書かれていました。
ここに、部門最適の帰結が表れていると感じました。
一つひとつの導入判断は、おそらくすべて正しかったはずです。その部門にとって、そのツールは最適だった。けれど、それを5回繰り返した先に、「つなぐ」という新しい仕事が生まれてしまった。
繰り返しますが、これは誰かの失敗ではありません。部門ごとに最適解を選ぶという構造が、必然的に生む結果です。
つなぐべきは、システムだけでしょうか
こうした状況に対して、「だから統合基幹システムを」「だからオールインワンのツールを」という提案が出てきます。それも一つの答えではあります。
ですが、私たちはもう少し別のことを考えています。
システムをつないでも、判断はつながらない、ということです。
たとえば営業の現場で言えば、こうなります。SFAには過去の商談履歴が入っている。MAには見込み客の行動データがある。会計システムには入金の状況がある。これらをすべて連携させれば、データは一箇所に集まります。
けれど、そこから先の「この会社に、いま、この内容で連絡を取るべきか」という判断は、データを集めただけでは出てきません。それは、どのシステムの機能でもないからです。
部門をまたぐ判断は、誰が持つのでしょうか
ここが、私たちがいちばん大事にしている部分です。
弊社は、BtoB営業を支援するAIをつくっています。リストをつくる、1社ごとに文面を整える、記録を残す——こうした作業は、AIが引き受けたほうがいい領域です。人がやる理由は、もうありません。
けれど、「送る」という最終判断だけは、人に残す設計にしています。
なぜなら、その判断は部門にも、ツールにも属さないからです。この相手にいま連絡するのが適切か。どういう温度で書くべきか。それは営業部門の都合だけでも、システムのデータだけでも決まらない。会社としてどう見られたいか、という話まで含んでいます。
部門ごとにツールを最適化していくと、いつの間にか「誰も持っていない判断」が生まれます。そして、それを埋めるためにまた新しいツールを探す。この循環に入ってしまうと、抜け出すのが難しくなります。
展示会に並ぶのは、部門です
DX総合EXPOには、人事、経理、法務、マーケティング、営業、業務改革と、部門の名前が並びます。それぞれの会場に、それぞれの解決策があります。
そこで一つだけ、持っておきたい問いがあります。
このツールを入れたあと、判断は誰が持つのか。
自動化されるのは作業です。判断まで自動的に決まるわけではありません。むしろツールが増えるほど、判断の所在は曖昧になっていきます。
部門を最適化することと、会社として意志を持つことは、別の作業です。前者はツールで買えますが、後者は買えません。そこだけは、人の側に残しておく必要があると考えています。