2026年7月31日 その他

なぜ配ることが目的になってしまうのか|展示会で見た、目的と手段のすり替え

この記事の結論

  • 話を聞いてもらえるかの差は熱意ではなく、目的がどこに置かれているか
  • 送信件数が目標になると、送ること自体が目的化して誠実さが失われる
  • 一斉送信が悪なのではなく、一社ごとに向き合うべき場面で向き合わないことが問題
  • 責めるべきは担当者ではなく、数字だけを追わせる設計
  • 会話が成立した件数と、渡しただけの件数は分けて数える
  • 指標の粒度が変われば、行動が変わる

先日、都内で開かれたAI・DX関連の展示会に足を運びました。

出展社として学ぶことが目的でしたが、来場者として立ってみて、想像していなかったことに気づきました。

話を聞いてもらえる人と、パンフレットすら受け取ってもらえない人がいる。

その差は、熱意でも愛想でもありませんでした。

先に申し上げておくと、私たちはまだ一度も出展したことがありません。来場者として一日歩いただけの立場です。それでも気づいたことがあったので、書き残しておきます。


本当に聞いてほしいと思っているか

最初に感じたのは、とてもシンプルなことでした。

その人が、本当に聞いてほしいと思っているかどうか。

これは営業にも通じる話です。

たとえば新規開拓のメールで、1日に何件送るという目標があったとします。

すると、たくさん送ることが目的になっていきます。

でも、本当の目的はそこではないはずです。

自社のサービスに興味を持っていただき、商談をして、ご導入いただくこと。

目の前の件数をこなすことに必死になるほど、その目的が見えなくなります。

そして、誠実なメールが送れなくなります。


丁寧でも、誠実とは限りません

文面が丁寧であっても、「これはAIが書いたのだろうな」「一斉送信だろうな」と伝わってしまうメールがあります。

その会社に向けて書かれたものでないなら、それは誠実ではない。私たちはそう考えています。

誤解のないように書き添えますと、一斉送信そのものが悪だと言いたいのではありません。

伝えたい情報を、必要としている多くの方に届ける手段として、有効な場面はあります。

問題は、一社ごとに向き合うべき場面で、向き合わないことです。


会場でも、同じことが起きていました

正直なところ、まともに歩けないほど声をかけられました。

パンフレットやグッズを次々に差し出されます。駅前でポケットティッシュを配られる光景を想像していただくと近いかもしれません。

気になったのは、その渡し方でした。

ただ差し出すだけで、こちらとの距離が極端に遠い方。

差し出してすぐに引っ込めてしまう方。

内緒話をしているのかと思うほど、声が小さい方。

自信がなさそうな方。

大半が、このような渡し方でした。

おそらく、パンフレットやグッズを渡せばいいと思っていらっしゃるのだと思います。

ただ、これはその方々の資質の話ではないはずです。

その日、ブースに立つ方の多くは「何部配ること」「何件読み取ること」を持たされています。初めての出展で、何を話せばいいのか教わらないまま立っている方もいたはずです。

配る枚数が評価されるなら、配ることに集中するのが正しい行動になります。会話に時間をかけるほど枚数は減るのですから、丁寧に話しかけないことのほうが合理的ですらあります。

責めるべきは、その場に立っていた人ではありません。


QRコードを読み取ることが目的でしょうか

受け取ってしまうと、「QRコードよろしいですか」と言われ、首から下げた来場者コードを読み取られます。

会話は、していません。

読み取ることが目的なのだとしたら、その行為は成立しているのかもしれません。

ただ、本当の目的はそこでしょうか。

QRコードを読み取ることでも、その後に営業メールを送ることでもないはずです。

自社のサービスに興味を持っていただき、価値を感じていただき、導入していただくこと。

この目的がずれていることが、誠実に見えない行動や、やっているつもりで成果につながらない行動を生んでいるのではないかと思いました。


指標は、いつのまにか目的の顔をします

前回のコラムで、AI導入の効果を作業時間だけで測っていると「速くなっただけ」で止まってしまうと書きました。

測る指標が、到達点を決めてしまうという話です。

今回感じたのは、その先にある現象でした。

指標は、放っておくと目的の顔をし始めます。

送信件数、名刺獲得数、QRコードの読み取り数。

どれも成果を測るために置かれた数字のはずが、いつのまにかそれ自体を増やすことが仕事になっていきます。

そして、その数字は達成されているので、誰も間違いに気づけません。

これは担当者の意識の問題ではないと思います。

数字だけを追いかけさせる設計が、そういう行動を最適解にしているだけです。


同じ1件として数えてよいのでしょうか

とはいえ、QRコードの読み取り数を追うこと自体は合理的です。展示会の費用対効果を測る指標が、ほかに見当たらないからです。

気になったのは、数え方のほうでした。

サービスの説明を聞いて、質問をして、それに答えていただいた相手。

グッズを差し出され、無言でコードを読み取られただけの相手。

この2つが、同じ「1件」として集計されています。

会話をしていない接触は、会話をしたことにはなりません。当たり前のことですが、数字の上では区別がつきません。

そして区別がつかないまま「本日100件獲得」と報告されれば、その日は成功だったことになります。

私たちが次に出展するときは、読み取った件数を2つに分けて数えようと考えています。

会話が成立した件数と、渡しただけの件数です。

道具は要りません。ブースの隅に紙を1枚置いて、正の字を2列書くだけです。

同じ100件でも、会話が成立したのが5件だったのか40件だったのかで、その日の意味はまったく変わります。

指標の粒度が変われば、行動が変わります。


それでも、行ってよかったと思っています

グッズやパンフレットのデザインなど、学べることはたくさんありました。

世の中にこれほど多様なサービスがあるのだと知って、純粋に楽しい時間でもありました。

私たちが次に出展するのは、9月30日と10月1日に福岡で開催される「AI博覧会」(主催:株式会社アイスマイリー)です。小さなブースからのスタートになります。

いつか大きなブースで話す立場になっているのだろうかと想像して、少しわくわくしました。

課題はたくさんあります。

それでも、まずは実行して、改善して、できることを続けていきたいと思います。

ブースの前を通る方に、こちらの都合で何かを差し出すのではなく。

聞いてみたいと思っていただけるまで、届け方を考え続けたいと思っています。

それは、私たちが日々つくっているメールの一通と、まったく同じことだと思うからです。

よくある質問

展示会の成果は、名刺やリードの獲得件数で測ってはいけないのですか。
測ること自体は問題ありません。ほかに測る指標が見当たらないのも事実です。問題は数え方で、会話が成立した接触と、無言でコードを読み取っただけの接触が同じ1件として集計されている点にあります。
具体的に何を数えればよいですか。
読み取った件数を2つに分けてください。会話が成立した件数と、渡しただけの件数です。紙を1枚置いて正の字を2列書くだけで始められます。同じ100件でも、会話が成立したのが5件か40件かで、その日の意味は変わります。
「会話が成立した」の基準はどう決めればよいですか。
厳密な定義よりも、その場で判断できることが大切です。サービスの説明をして、相手から質問が出たかどうかを目安にすると、ブースに立ちながらでも区別できます。
パンフレットを配ること自体が悪いのでしょうか。
いいえ。認知を広げる手段として有効です。ただ、配る枚数だけが評価されると、会話に時間をかけないほうが合理的になります。行動を決めているのは担当者の意識ではなく、評価される数字のほうです。
一斉送信のメールも同じ問題を抱えていますか。
構造は同じです。「100件送信」の中に、一社ごとに書いた10件と一斉配信の90件が混ざっていても、数字の上では同じ100件です。一斉送信そのものが悪いのではなく、向き合うべき場面で向き合わないことが問題だと考えています。
出展経験がなくても、この考え方は使えますか。
この記事自体、まだ一度も出展したことのない立場から書いています。数え方を決めるのに経験は必要ありません。むしろ最初に決めておくほうが、後から変えるより簡単です。

営業の作業は、AIに任せられます。

リスト集め・メール作成・追客を自動化。最後の送信だけ、人が決める。

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