なぜ「何屋か」の一語で読まれ方が変わるのか|カテゴリ名は買い手の言葉で決まります
この記事の結論
- 広いカテゴリは既存の記憶で処理され、内容を読む前に読み飛ばされる
- カテゴリ名は暗黙の前提を運ぶ。「支援」は営業担当者がいる前提を含む
- 売り手の分類語と買い手の課題語は一致しないことが多い
- 名乗りの検証は3点。買い手の言葉か/前提が顧客と一致するか/同じ棚のものと同じ問いに答えているか
- Nudge HQは「新規開拓」を選択。営業支援が誤りだからではなく、作った理由に近い方から順に届くよう言葉を寄せた
先日、あるメディアの特集に掲載していただくことになり、記事の左上に載せる「ジャンル名」を決める場面がありました。
制作会社の方からのご提案は「営業支援」。
妥当な提案です。弊社のNudge HQは、BtoBの営業活動でリスト作成や文面作成といった作業をAIが担うサービスですから、営業支援という棚に置くのは間違っていません。
それでも、少し考え込んでしまいました。
広い棚に置かれると、読み飛ばされます
「営業支援」という言葉が指す範囲は、かなり広いものです。
SFAもCRMも名刺管理も、インサイドセールスの代行も、すべて営業支援に含まれます。読者の方がこの言葉を見たとき、頭の中に浮かぶのは、すでに導入済みのツールかもしれません。
そうなると、こう判断されます。
「営業支援なら、うちはもう入れている」
内容を読む前に、既存の記憶で処理されてしまうのです。
広いカテゴリを選ぶと、多くの人に当てはまるぶん機会損失が減るように思えます。実際には逆で、比較対象が増え、先に棚に並んでいるものの印象に上書きされます。
カテゴリ名は、暗黙の前提を運びます
もう一つ、見落としやすい点があります。
「営業支援」という言葉は、支援される主体を前提にしています。つまり、営業担当者がいる会社です。
では、営業担当者がいない会社はどう読むでしょうか。
自分の話ではない、と判断します。
言葉が対象読者を選別しているわけです。看板に書いた一語が、読む人と読まない人を分けている。これは商品の中身とは無関係に起きます。
私たちも、最初は広く考えていました
正直に申し上げますと、当初は営業部門のある会社も視野に入れていました。
仕組みとしては、営業担当者が何名いる会社でもお使いいただけます。届く範囲は広いほうがいいとも考えていました。
考えが変わったのは、そもそもなぜこれを作ったのかを振り返ったときです。
弊社代表の原は、飛び込みとテレアポの営業会社から人材業界に移り、チームで5,000名を超える求職者の方と面談してきました。その後に独立して、いちばん困ったのが自社の新規開拓です。
届けたい相手はいる。一社ずつ調べて書けば伝わるという実感もある。けれど、事業を回しながらその時間を捻出することが、どうしてもできませんでした。
Nudge HQは、そのときに欲しかったものです。
出発点は、営業組織の生産性ではありませんでした。営業する人がいない側の、時間の問題でした。
そう考えると、まずお使いいただきたい方ははっきりします。新規を伸ばしたいけれど、営業に人を割く余裕がない会社です。
その方たちが自社の状態を表すときに使う言葉は、「営業支援」ではありませんでした。
買い手は、自分の課題を言葉で呼んでいます
カテゴリ名は、売り手が決めているように見えて、実際には買い手の頭の中にあります。
「営業支援を導入したい」と考えて情報を探す方は、ほとんどいません。
探すときに使われるのは、困っている状態そのものの言葉です。新規が伸びない。営業に人が足りない。アプローチする先がない。
売り手が使う分類語と、買い手が使う課題語は、しばしば一致しません。そして掲載面で目に入るのは、たいてい分類語のほうです。
ここがずれていると、内容がどれだけ合っていても、たどり着いてもらえません。
名乗りを決めるときの3つの問い
自社を何と名乗るか迷ったときは、次の3点を確認しています。
1. その言葉は、買い手が自分の課題を呼ぶときに使う言葉でしょうか
社内や業界で通じる分類名ではなく、困っている当人が口にする言葉かどうかです。
2. その言葉が前提としている状況は、実際の顧客と一致しているでしょうか
「支援」「効率化」「強化」といった言葉は、それぞれ異なる前提を含みます。すでにある業務を前提とするのか、まだない状態を前提とするのかで、届く相手が変わります。
3. その棚に先に並んでいるものと、同じ問いに答えているでしょうか
同じ棚にあるということは、同じ質問への回答として比較されるということです。答えている問いが違うなら、棚を分けたほうが正確に伝わります。
弊社の結論
今回は「新規開拓」でお願いすることにしました。
営業支援という括りが誤りだからではありません。営業部門のある会社にお使いいただけないわけでもありません。
ただ、名乗りは全員に向けて広げるものではなく、まず誰に届いてほしいかを決めるものだと考えました。作った理由に近い方から順に届くように、言葉のほうを寄せた、というだけのことです。
狭くすると、届く人数は減ります。減るのは「自分には関係ない」と判断される方の数です。
カテゴリ名は、看板ではなく住所です
看板は、自社がどう見られたいかを表すものです。
一方でカテゴリ名は、探している人が自社を見つけるための住所にあたります。
見栄えのいい看板を掲げても、住所が実際の場所とずれていれば、訪ねてきてはもらえません。
もし今、自社の名乗りが業界の分類語のまま置かれているのであれば、一度、お客様が問い合わせのときに使った言葉を思い出してみてください。
その言葉のほうが、正しい住所であることが少なくありません。